アルコール性肝障害

(1)アルコールの代謝
アルコールはまず約3割が胃から吸収され、胃内で乳び状になった残りが小腸から吸収されます。 そして、血液中に入ったアルコールは門脈を通って、肝臓に運ばれます。肝臓にはアルコールを分解するアルコール脱水素酵素(ADH)と、 ミクロゾームエタノール酸化酵素(MEOS)があります。 主にADHによってアルコールは分解されアセトアルデヒドになります。アセトアルデヒドは、更にアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH) により分解されて酢酸になり、最終的には炭酸ガスと水にまで分解されます。 この経路で処理できる量を超えた過剰のアルコールは、MEOSを使った経路で代謝されます。 アルコールはMEOSでも同じようにアセトアルデヒドから酢酸になります。 アルコールは約8割がADHで分解され、残りはMEOSによって分解されます。 ただし、ADHがアルコール専門の酵素なのに対して、MEOSは一般的な薬剤を代謝する酵素なので、アルコールも代謝できるというわけです。 少量のお酒が肝臓に悪い影響を与えるわけではありません。その日飲んだアルコールをその日のうちに処理出来ないような量 (ビールなら5本、ウイスキーでボトル半分、日本酒では5合以上)を毎日飲み続けている大酒家は、 いつも肝臓にかなりの負担をかけ続けていることになります。
(2)アルコールを飲み続けていると
大量飲酒を続けていると、まず肝細胞の中に脂肪が沈着する脂肪肝が起こります。 脂肪肝はアルコール性肝障害の注意信号といわれています。この段階ではお酒を控えるだけで、すぐに正常に戻すことか出来ます。 それでも飲み続けると、食欲不振、吐き気、黄だん、発熱などの症状がみられるアルコール性肝炎になってしまいます。 それでも更に飲み続けると、肝臓が縮んでカチカチに硬くなり使いものにならなくなる「肝硬変」になってしまいます。
(3)C型慢性肝炎との関係
一般的にはC型肝炎にかかっている人は約2%程度といわれています。 ところが、アルコールが原因で肝疾患を起こした人では約40%がC型肝炎にかかっています。 特にウイルス性C型肝炎が絡んでくると、アルコール性肝炎だけの時よりも重症化してしまいます。 そして、免疫系の機能が低下しているので、肝硬変や肝がんが発症するのも早くなるといわれています。
(4)一般検査所見
@肝機能検査:GOT優位の軽度のトランスアミラーゼの上昇とγ-GTPの上昇がみられ、 禁酒または節酒にてその改善が認められるのが特徴です。ただし、肥満者や肝炎回復期ではGPT優位のことがある点、注意が必要です。 また、ミトコンドリア障害を反映して、血清GLDHやmGOT/GOTの上昇がみられます。 A他の検査:肝障害とは無関係にアルコール摂取により生ずる脂質代謝異常と腎排泄障害から、血清中性脂質、 MCV(平均赤血球体積)高値および高尿酸血症がみられ、これらはHBs抗原陰性、血清IgA高値とともに、成因診断のヒントとなります。 Bアルコール性肝炎では、上記に加え、血清総ビリルビン高値(多くは5mg/dl以下)と多核球を主体とする白血球増多がみられ、 重症型では凝固系異常や血漿エンドトキシン上昇を伴うことが多いようです。
  (5)アルコール性肝障害の診断基準(1986年改訂版)
「アルコール性」とは、長期間にわたる過剰の飲酒が肝疾患の主な原因と考えられるもので、 禁酒後に種々の臨床症状や検査成績の明らかな改善が認められるのを原則とします。

T アルコール性脂肪肝:毎日、日本酒に換算して平均3合以上の飲酒を、少なくとも5年以上続けた「常習飲酒家」で、 肝病変の主体が肝小葉の約1/3以上(全肝細胞の約1/3以上)にわたる脂肪化(fatty change)であり、 そのほかには顕著な形態学的異常は認めないもの。
U アルコール性肝炎:「常習飲酒家」で、過剰の飲酒を契機にして急性の肝障害の臨床症状を示した症例のうち、 肝の組織学的検索が行われ、肝には、下記@〜Bの組織所見のうち2項目以上を認める症例。
@アルコール硝子体(Mallory body)、A好中球浸潤を伴う肝細胞壊死、B肝細胞の風船様変化(巨大ミトコンドリア)。
V アルコール性肝硬変: 毎日、日本酒に換算して5合以上の飲酒を10年以上続けた、あるいはこれに相当する積算飲酒量を有する「大酒家」で、 特徴的な臨床症状、あるいは腹腔鏡や肝生検から肝硬変と診断され、アルコールが上の主な原因と考えられる症例。
W アルコール性肝線維症:「常習飲酒家」で、肝病変の主体が、
@中心静脈性の線維化、A肝細胞周囲性の線維化、BGlisson鞘から星芒状にのびる線維化のいずれか、ないしすべてであり、 そのほかには明らかな炎症細胞浸潤や肝細胞壊死を認めないもの。
X常習飲酒家の慢性肝炎
アルコールを上手に利用してみると
アルコール性肝炎についてビデオ アルコール依存症にならないために